DON’T PUSH!(短編No.007)
2002年9月3日【DON’T PUSH!】
「それでは、これより司法解剖を行います」
白い部屋。
4人の白衣達に囲まれた、白い遺体。
死んでいるのは、男だ。
特に目立った外傷はない。
山奥で、首吊り用と思しき
ロープのそばで倒れているのを、
たまたま通りかかった旅行者に発見された。
奇妙なことに、遺体の損傷は限りなくゼロ。
バイタルは完全に死亡状態を示しているが、
何時死んだのか、何故死んだのかが
まったく特定できない。
そういう理由で、司法解剖に回されたのだった。
「しかし、まったく外傷がないな…
それに薬物の痕跡も外面からでは認められない」
執刀医が首をひねる。
「こんな奇妙なホトケさんは初めて見ますね。
…ん、なんだこれ?」
補佐の医者が、遺体の背中に何かを発見した。
プラスチック製、直径1cm程度の赤いボタン。
ご丁寧にも、そのすぐ上には
赤い文字でこう書かれていた。
Don’t push!
↓
◎
「スイッチ?」
「一体何のスイッチだ?」
「というかこれは何の冗談だ?」
「これが死因だったら笑いますよね」
「…」
「あ、こら、オマエ」
「もう我慢できない!えい!」
ぽちっ。
立会い人だった女医が、ボタンを押してしまった。
かちり、と。
何かが切り替わる音がして。
「何だったんだ、今のは…」
「えーと…たしかスイッチが」
「スイッチ?何を寝ぼけたことを…
まあいい、司法解剖を再開しよう」
執刀医がメスを構えたところで。
・ ・ ・ ・ ・ ・
その場にいた3人の白衣達の動きが止まった。
「あれ?…ホトケさんって女でしたっけ?」
しばしの沈黙。
「違うような気もするが…気のせいだろう」
執刀医は、釈然としないものを感じながらも
職務に戻る。
もう一度遺体を眺めた。
「しかし、まったく外傷がないな。
薬物の痕跡も外面からでは認められない。
…それに、たった今まで生きていたような
この血色のよさは何だ。気味が悪い」
「こんな奇妙なホトケさんは初めて見ますね。
…ん、なんだこれ?」
補佐の医者が、遺体の背中に何かを発見した。
プラスチック製、直径1cm程度の赤いボタン。
ご丁寧にも、そのすぐ上には
赤い文字でこう書かれていた。
Don’t push!
↓
◎
──────────────────────
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
──────────────────────
スイッチの魔力。
火災報知機のボタンは魅力的だし、
公衆電話の緊急ボタンも使ってみたい。
いや、それよりもっと。
コピーロボットの鼻を押してみたい…。
ぽちっとな。
目の前に核兵器のボタンなんかあった日には。
胃に穴があくことは必至。
…ですよね?(←同意を求めるな)
「それでは、これより司法解剖を行います」
白い部屋。
4人の白衣達に囲まれた、白い遺体。
死んでいるのは、男だ。
特に目立った外傷はない。
山奥で、首吊り用と思しき
ロープのそばで倒れているのを、
たまたま通りかかった旅行者に発見された。
奇妙なことに、遺体の損傷は限りなくゼロ。
バイタルは完全に死亡状態を示しているが、
何時死んだのか、何故死んだのかが
まったく特定できない。
そういう理由で、司法解剖に回されたのだった。
「しかし、まったく外傷がないな…
それに薬物の痕跡も外面からでは認められない」
執刀医が首をひねる。
「こんな奇妙なホトケさんは初めて見ますね。
…ん、なんだこれ?」
補佐の医者が、遺体の背中に何かを発見した。
プラスチック製、直径1cm程度の赤いボタン。
ご丁寧にも、そのすぐ上には
赤い文字でこう書かれていた。
Don’t push!
↓
◎
「スイッチ?」
「一体何のスイッチだ?」
「というかこれは何の冗談だ?」
「これが死因だったら笑いますよね」
「…」
「あ、こら、オマエ」
「もう我慢できない!えい!」
ぽちっ。
立会い人だった女医が、ボタンを押してしまった。
かちり、と。
何かが切り替わる音がして。
「何だったんだ、今のは…」
「えーと…たしかスイッチが」
「スイッチ?何を寝ぼけたことを…
まあいい、司法解剖を再開しよう」
執刀医がメスを構えたところで。
・ ・ ・ ・ ・ ・
その場にいた3人の白衣達の動きが止まった。
「あれ?…ホトケさんって女でしたっけ?」
しばしの沈黙。
「違うような気もするが…気のせいだろう」
執刀医は、釈然としないものを感じながらも
職務に戻る。
もう一度遺体を眺めた。
「しかし、まったく外傷がないな。
薬物の痕跡も外面からでは認められない。
…それに、たった今まで生きていたような
この血色のよさは何だ。気味が悪い」
「こんな奇妙なホトケさんは初めて見ますね。
…ん、なんだこれ?」
補佐の医者が、遺体の背中に何かを発見した。
プラスチック製、直径1cm程度の赤いボタン。
ご丁寧にも、そのすぐ上には
赤い文字でこう書かれていた。
Don’t push!
↓
◎
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スイッチの魔力。
火災報知機のボタンは魅力的だし、
公衆電話の緊急ボタンも使ってみたい。
いや、それよりもっと。
コピーロボットの鼻を押してみたい…。
ぽちっとな。
目の前に核兵器のボタンなんかあった日には。
胃に穴があくことは必至。
…ですよね?(←同意を求めるな)
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