壊れる(短編No.002)

2002年8月29日
【壊れる】
 
夏の終わりの涼しい風が、頬をなでる。
 
学校の屋上。
僕は、すこし埃っぽい給水塔の上に座って
タバコを吸っている。
 
マルボロ。
 
夕日の赤に染まった煙が
ゆらゆらと空へと昇っていく。
 
「なあ、ここから飛び降りた気分はどんなんだ」
 
ぽつり、と。
ここで死んだ妹に問いかける。
もちろん返事などあるわけもなく。
 
あいつが死んだのは、今年の1月1日。
僕らが夜の学校に忍び込んだ日。
 
ずいぶん前から繰り返してきた
許されない行為の後。
 
携帯ラジオから流れるカウントダウンを
一緒に聞いた。
 
5、4、3、2、1、────。
 
ハッピーニューイヤー!
そう言いながら、あいつは飛び降りた。
僕の目の前で、屋上のフェンスを飛び越えて。
 
どういう表情をしていたかは
暗くて見えなかった。
 
ただ、声は楽しそうだったと思う。
 
 
ぐしゃり。
 
 
雲が晴れ、月明かりが照らす奇妙なオブジェ。
 
黒い染み・赤いコート・白い肌。
 
何かが決定的に欠如したその光景を、
しかし僕は、美しいと思った。
 
「なあ、ここから飛び降りると楽になれるのか」
 
ぽつり、と。
僕はもう一度つぶやいた。
 
それから僕は
半分の長さになったマルボロを地面でもみ消すと
持ってきた花束を、力いっぱい放り投げた。
 
フェンスを飛び越えて落ちていく赤い花束。
それにむかって、僕はこう言った。
 
 
「ハッピーバースデー!
 お前が一緒にいてくれて、僕は楽しかった」
 
涙は、流れなかった。
 
 
 
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さて、短編小説というかなんというか、
今日のはオチがない…(薄笑)

ショートショートは激ムズなんですよ…。
でも、、これも修行だ。
頑張りまッス。

ま、ネタ切れしたら
普通の日記でも書くとしましょう。
 
 

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